一般投資家向け

日本初!「ファイナンシャル・アドバイザー協会」を立ち上げた理由とは?

2020年1月に設立された、一般社団法人ファイナンシャル・アドバイザー協会。

アメリカではお金の相談相手として広く普及しているファイナンシャル・アドバイザーですが、日本では未だ歴史が浅く、金融商品仲介業者のファイナンシャル・アドバイザー(IFA)※注1や業界関係者が集う協会設立は初の試み。

発起人のひとりとしてファイナンシャル・アドバイザー(IFA)の普及やコンサルティング力向上等に取り組んでいる理事長の中桐啓貴さんに、「なぜ、この協会を立ち上げようと思われたのでしょうか?」とその理由について伺っていきます。

――「ファイナンシャル・アドバイザー協会」を立ち上げた経緯について、伺えますでしょうか。

中桐啓貴さん(以下、敬称略):はい。2004年に「金融商品仲介業」という制度ができたことがきっかけです。金融商品仲介業は、お客様と金融商品取引業者(証券会社など)との間に立ち、株式や投資信託、債券などの売買の仲介を行います。協会の会員(金融商品仲介業者)は内閣総理大臣の登録を受けています。

当初、日本の金融商品仲介業者は、数人くらいの小規模の会社が多く、横のつながりを持とうにも、合同研修や情報交換の場は、業務のプラットフォームを提供する証券会社などで行っていただくことはあるのですが、それ以外はなかなかないというのが現状でした。
そこで、同じ業種の方々と横のつながりを強めたいと思ったのが、この協会設立の発端です。

――世の中の状況や制度、商品の種類や仕組みは日々目まぐるしく変わりますので、同じ業種同士の情報交換には、大変意味がありそうですね。

中桐:はい、そうですね。お医者さんでも「〇〇学会」がたくさんありますよね。製薬会社など、医療関係の分野の企業などがみんなで協力しながら、専門性を高めるために情報交換をして、より高い医療技術を磨く場になっているのではないでしょうか。

それと同じように、お金のジャンルでも、得意分野を持ち寄り、情報を常にアップデートして、より価値のあるサービスをお客様に提供するための研鑽の場をつくることで、個人の技術力アップや業界の認知度向上につながり、ひいては、お客様の利益につながっていくものと考えています。

――日本では、あまりなじみがない「ファイナンシャル・アドバイザー(IFA)」ですが、海外ではかなり普及をしているという話を聞きます。アメリカでも、業界の盛り上がりを見せているのでしょうか。

中桐:はい、アメリカでFPA(Financial Planning Association)がカンファレンスを毎年開催しているのですが、全米から3000人ほどファイナンシャル・アドバイザーが集まる大きなイベントで、2008年から、コロナのときを除いて、私も毎年視察に行っています。

アドバイザーやFP事務所のほか、資産運用会社など、金融機関に関する会社が一堂に会し、「どうすれば自分たちの専門性や認知度が上がるだろうか」「どんなことをすればより良いサービスが提供できるだろうか」と、業界全体のレベルアップやスケールアップを話し合っているのです。個々の利益ではなく、業界全体を考えている彼らの姿に感銘を受けたことも、協会設立のきっかけになりました。

――「ファイナンシャル・アドバイザー協会」で行っていることは、どんなことでしょうか。

中桐:ファイナンシャル・アドバイザー(IFA)の専門性向上やネットワークづくり、業界の認知度向上などが活動の目的です。私たちの業務のプラットフォームを提供してくださっている証券会社の方々にも加入いただいておりますし、金融商品を提供する運用会社や保険会社、情報ベンダー、情報提供会社など、金融商品仲介業を支える皆様方にも加入いただいております。彼らと共にみんなで業界を盛り上げていきたいと思っています。

――協会に加入するファイナンシャル・アドバイザー(IFA)の方は、どんな取組みを求められていますか?

中桐:誰でも入れるという形ではなく、「正会員」の場合、定量・定性的な審査を行っています。お客様本位のビジネスをしているか、という点が審査の大きなポイントです。

重視しているのは、以下の3つです。

●「お客様に最適なサービスの提供」

単にお客様に金融商品を販売するのではなく、お客様のライフステージに応じた最適な資産計画を提案し、その目標達成のために支援を行うべく、最適と考えられる金融商品を提案することを求めています。

●「合理的かつ明確な手数料体系」

お客様からアドバイスの対価を得る手数料については、例えばフィーベースといって、資産残高の何パーセントといった具合に設定し、お客様の資産が増えれば、金融商品仲介業者の手数料も増えるというように、お客様と同じ方向を向けるような手数料体系を目指しています。また、手数料を明確にして、お客様が理解できるように開示することを求めています。

●わかりやすい情報開示

お客様が十分かつ公正な情報に基づいて主体的に判断を下せるように、金融商品や市場動向等に関する情報に加えて、経営方針や理念、役職員の専門性、手数料体系などの情報についても、お客様が理解できるように、わかりやすい方法で開示・提供するように求めています。

――ファイナンシャル・アドバイザー協会に所属されている正会員なら、上記の審査をクリアしているということで、お客様の立場から見ても安心感がありそうですね。

中桐:はい、以前の記事(リンクを貼る)でもお伝えしましたが、ファイナンシャル・アドバイザー(IFA)は「お金のかかりつけ医」的な存在であると思っています。法人としては数人や10数人くらいの規模が多いので、志がある方々を協会としてきちんとまとめ、お客様本位のビジネスを安定的に継続していけるための研修や情報提供を行っていきたいと思っております。

日本において長寿化が進む中、どのようにマネープランニングをしたらよいかという勉強会など、さまざまな研修や情報提供・交換をしながら、お互い切磋琢磨して業界を盛り上げて、お客様によりよいメリットをお届けできたらと思います。

※1 本コラムにおけるファイナンシャル・アドバイザー(IFA)は「IFA法人所属のFA(外務員)」と「個人事業主としての金融商品仲介業者」の総称であり、金融商品仲介業者の外務員を指します。