一般投資家向け

ネット証券主導による売買手数料無料化の流れの中で、対面でアドバイザーに相談するメリットは?

向かって左から:SBIマネープラザ株式会社 ファイナンシャル・アドバイザー部長 神洋平さん、総合企画部参与 浦具成さん

最近は、ネット証券の手数料格安化が話題です。安い手数料で資産運用も可能になった今、有料でアドバイザーに相談するメリットはどんなところにあるのでしょうか。一般社団法人ファイナンシャル・アドバイザー協会の会員である、SBIマネープラザの神洋平さんと浦具成さんにお話を聞きました。

――今はネット証券での売買手数料も安くなりました。「わざわざ割高な手数料を支払ってまで、対面でアドバイザーに相談して資産運用をするメリット」は、どんなことがありますか。

神洋平さん(以下、敬称略):大きくは3つあると思います。

「ゴールを設定したうえで資産運用をすること」「ポートフォリオの作成」「心理的なサポート」です。

まず、「ゴールを設定すること」ですが、金融商品の売買自体は、ネット証券でも個人で行えます。ですが、アドバイザーに相談することで「ゴールを設定したうえで、必要な金額を考え、資産運用すべきかを一緒に考える」というステップを踏むことができます。

例えばお子様の教育資金、結婚資金、その他大きな支出、さらには、老後を豊かに過ごすための、老後の安定資金など、ゴールは人それぞれです。それに応じて必要な資金は異なりますので、アドバイザーがいれば、より自分のゴールを目指しやすくなるでしょう。

次に、「ポートフォリオ」の作成や調整があげられます。

株や債券、投資信託、預貯金などへの投資配分を「ポートフォリオ」といいますが、いい金融商品を持っていたとしても、その割合である「ポートフォリオ」が自分にあっていないと、目指している資産運用ができません。

アドバイザーは、お客様の目標や性格、お気持ちなどを理解したうえで、ポートフォリオを作成し、株価などの動きにあわせて、調整していく役割も担っています。

浦具成さん(以下、敬称略):さらに、アドバイザーは「心理的なサポート」ができる面も大きいですね。

経済学と心理学を融合した行動ファイナンス理論というものがありますが、必ずしも人は合理的な行動をとるとは限らないことがわかっています。相場が下がると怖くなって売ってしまったり、相場が上がったらつられて買ってしまったりするんです。人は「損すること」への耐性が弱く、損をしたくないと思うあまり、本来とは逆の行動をとってしまいがちです。

ネット証券では手数料が安く、売買もすぐにできて便利ですが、そういった人間心理に翻弄されると、うまく利益を出せないケースも多いでしょう。

熟練のアドバイザーなら、行動ファイナンス理論に精通し、さまざまな経験を重ねていますので、相場に応じて必要なタイミングで助言ができます。実際にアメリカでは、アドバイザーがついていた方が、年利回りが数%上がったというデータもあります。

神:「自分で資産運用をしているけれど、うまくいかない」と、アドバイザーに相談に来られる方も多いですね。また、金融機関に相談しながら資産運用をしていても、「本当に自分にあった商品なのだろうか。誰にでもすすめているのではないか」と悩んで、ご相談に来られる方もいます。自分にあった、納得のいくポートフォリオで、資産運用をすることは大事だと思います。

また、相場の動きによって、資産バランスが刻々と変わっていきます。リバランスといって、当初のポートフォリオに戻すために、売買によって調整することもアドバイザーが助言できることの一つです。

浦:もう一つ、会社や担当者にもよりますが、アドバイザーなら、金融商品以外の相談にも乗れるケースが多いことがあげられますね。相続や住宅ローン、不動産投資、保険など、取り扱いがあれば、お客様の資産や考え方、今後のゴールにあわせて、よりあったものをご提案できるケースも多いと思います。

――株式の売買手数料無料化などの動きが盛んですが、どのようにとらえていますか。

神:売買手数料無料化は、時代の流れだと感じますね。金融機関の収益は、売買手数料から得るのではなく、まずは多くのお客様に選んでいただき、預かり資産を伸ばしていくことで、会社の利益も伸ばすという、お客様からの“信頼”をベースに収益化していくことが大事では、と思います。

浦:大手証券会社でも、預かり資産残高に応じて設定される手数料体系に移行する動きもありますね。商品を何度も売買して得るような売買手数料体系から、世の中全体としても、今後移行していくのではないでしょうか。

とはいえ、1年に1回しか売買しない方は、売買手数料の方がお得ですので、売買手数料体系が併用してあり、ご自分に合う方を選ぶ時代になっていくでしょう。

ただ、預かり資産残高に応じて設定される手数料体系の方が、お客様の利益と、営業担当の利益が同じベクトルを向きますから、資産全体を増やすことで、お客様も販売側も、win-winになります。アメリカの業界でも6~7割ほどが、預かり資産残高に応じての手数料体系になっていると聞きます。まさに、本FA協会が目指しているところでもありますね。

神:実際に私たちの会社にいらっしゃる方は、金融商品の手数料への関心が高い方が多いですね。「どこにどんな手数料がかかるか」をしっかりご案内したうえで、納得感や安心感を持って利用いただけると考えています。

――アドバイザーに相談したい場合、「誰に相談したらよいのか」と迷う方も多いようです。

浦:金融商品仲介業者の登録外務員数は、2021年12月末時点で5000人を超えています。

IFA(※注)と呼ばれる独立系金融アドバイザーがいますが、わが国では一般的に金融商品仲介業の登録業者を指して使われています。IFA法人に所属するアドバイザーと個人で登録している者を含めて、IFAと呼ぶ場合もあります。

IFAは、会社として登録している方と、個人で登録している方がいて、全体でみると4分の1ほどは個人で登録している個人事業主です。どちらがよいということはなく、お客様のために考えている方と、過去に問題になったように、短期売買を繰り返すことを推奨しているケースもあるかもしれません。本来アドバイザー自身の資質の問題であり、大きな組織に所属していれば安心か、それとも個人で独立していれば安心かということではないと考えています。

この点、本FA協会の正会員は入会時に、顧客本位の業務運営の取組状況について協会の審査を受けますし、入会に際して協会が制定した倫理綱領を遵守する旨誓約しており、協会は遵守状況を定期的にモニタリングしていますので、安心していただけるものと思います。

これから本FA協会の認知度を更に上げて、お客様にとってより良いサービスをお届けできたらと思っています。

神:FA協会に所属するアドバイザーとして、「自分だったら、どのようなサービスを受けたいか」を常に考えて、お客様はもちろんのこと、金融機関にお勤めの方にも信頼をいただけるようなサービスを目指しています。

――今は世界でさまざまな動きがありますし、アドバイザーに相談する安心感はますます増えそうですね。

神:はい、そうですね。お金のプロであっても、今後世界でどのような動きがあるかを予見するのは難しいですが、アドバイザーとして世界の経済構造を理解し、長期的な目線で見ることで、日本の立ち位置や今後の可能性を推測することは可能です。そのうえで、過去の経験も踏まえて、資産運用の対処法をアドバイスしています。

今日明日といった目先の株価変動ではなく、長期的な視点を持ち、冷静になれるところが、アドバイザーの強みの一つだと思います。

また、お客様と定期的にお会いしていると、「ゴール」が変わっていくことも多々あります。生活環境や気持ちの変化などに応じて、資産運用もその「ゴール」にあったものに調整していく必要があると思います。

人生を伴走させていただくことになるため、アドバイザー自身の人間性を磨いて、お客様に信頼していただくことが欠かせません。当然ですが、不誠実な態度を取らない、お客さまを欺くような行為をしないことが前提にあります。

金融に関する専門知識と人間性を兼ね備えて、お客様の信頼をいただけるよう日々尽力しています。その結果、嬉しいことに、お客様が友人や知人をご紹介くださる、ということも多いんですよ。

※注:「IFA(Independent Financial Advisor)」とは、「金融商品仲介業者所属のアドバイザー(外務員)」と「個人事業主としての金融商品仲介業者」の総称であり、金融商品仲介業者に所属している外務員のことです。