一般投資家向け

家族構成によって変わる?資産運用やお金まわりの注意点とは

IFA法人GAIA FP/CFP® 新屋真摘さん

「資産運用をしたい」と思ったときには、状況に応じていくつか気を付けたいことがあります。特に家族構成によって、リスクの取り方や押さえておくべきポイントが異なります。
IFA法人GAIAの新屋真摘さんに詳しく聞きました。「資産運用をしたい」と思ったときに、気を付けたいこととはどんなことでしょうか。新屋真摘さんは、「『家族構成』ごとに押さえておくべきポイントがあります」と話します。
「子育てファミリー」「お一人さま(シングル)」「夫婦共働き」「フリーランス・個人事業主」に分けて、資産運用の際のチェックポイントを教えてもらいました。

1■子育てファミリー

想定外の支出に耐えられる準備を

人生の3大資金は、教育費、住宅費用、老後資金と言われます。子どもがいる家庭は、教育費や住宅ローンを払いながら老後資金を準備しなければならず、そのバランスに注意が必要です。キャッシュフロー表を活用し、いつ頃どの程度の費用が必要かを確認します。一般的には子どもの成長とともに教育費負担が大きくなるので、子どもが未就学の間に将来の貯蓄をスタートさせるなど、お金の貯め時を意識すると良いでしょう。

目の前の支出に追われがちな子育てファミリーですが、余裕がない家庭だからこそ、資産運用でお金を増やすという考え方も必要です。運用益が非課税になり、必要なときに引き出しが自由にできるNISA口座が使い勝手が良いでしょう。

リスクのとりすぎはおすすめできません。リスクのある金融商品(株や投資信託等)で教育費を準備している場合は、必要なタイミングでお金を出せるかのチェックが必要です。マーケットが急落したタイミングで大学入学を迎えたとしたら、下がったところで売らずにいったん預貯金などで費用を捻出できるかどうか、という視点で資金計画を立てて、預貯金と資産運用にまわすお金の配分を考えましょう。子どもが小さいうちは積極的な運用をしながら、成長とともにリスクを落とすなどリスクの調整も考えます。

晩産家庭の場合の注意点は?

晩産家庭ではより慎重な資金計画が必要です。40代で出産した場合は、子どもが大学を卒業するタイミングで親は60代になりますので、子育てが終わってから老後資金づくりのラストスパートとはいきません。

教育費に関しては、医薬学や芸術系などへの進学や留学などお金のかかる進路を選んだり、大学院進学や浪人、留年、休学をしたりと親の想定どおりにはいかないものです。教育費のピークを迎えたころに現役時代が終盤を迎える晩産家庭では、想定外の教育資金支出は老後資金不足に直結します。想定外の出来事にも柔軟に対応できるよう、余裕をもって多めに教育費を準備できるといいでしょう。

晩産家庭では住宅購入の年齢も遅くなりがちで、退職時点で住宅ローンの返済も多く残っている可能性があります。さらに家を買ってから十数年たてば水回りなどのリフォームのほか、一軒家なら外壁の塗り替えや屋根の修理などの費用も必要になります。ぎりぎりの資金計画で購入に踏み切ると将来家計が非常に苦しくなる可能性がありますので、物件価格で無理をしないことも大切な視点です。

夫婦共働きで子どもがいないまま30代、40代を迎えた家庭は家計にゆとりがあり、贅沢に慣れてしまっているかもしれません。遅くに子どもができても、子どもをもつ以前のペースで教育にもたくさんお金をかけたくなってしまいますが、支出に優先順位をつけるなどして早いうちから家計を見直し貯蓄額を増やしましょう。さらに資産運用でしっかり増やせれば、その後の余裕度が大きく変わってくるはずです。

2■お一人様(シングル)

マンションを買うことには慎重に

シングルの方は、将来を考え出した時にマンションを買おうと考えることが多いようです。自分の持ち家があることは安心感につながりますが、ライフプランが変わったときに住宅ローンがその後のマネープランの負担になってしまうこともあります。

今はシングルでも一生ひとり暮らしとは限りません。50代を過ぎて電撃結婚をすることもありますし、親の介護のために実家に戻るようなケースもあるため、終の棲家と思って買った物件に一生住めるとは限らないのです。買うとすれば、何かあった際に売りやすい、貸しやすい物件を意識することもポイントです。収入がピークのときに物件を買ってしまうと、その後の体調の変化などで仕事のペースを落としたくなったときに、住宅ローン返済が厳しくなる場合があります。頭金は多めに準備し、ギリギリの返済計画になるような物件は避けたほうが無難でしょう。

信頼できる相談相手を見つけ、お金に余裕をもつ

老後に頼れる家族がいない場合は、入院や老人ホームの入所などの手続き、財産管理などさまざまなことを専門の代行業者を利用するなどしてお金を使って解決する可能性もあります。多めに老後資金を用意しておくことで不安が軽減されるでしょう。

住宅価格で無理をしなければ、毎月の収支に余裕が生まれるかもしれません。その分を投信積立に回し、「お金と共働き」するのも良い方法です。iDeCoで老後資金づくり、NISAで将来の繰り上げ返済に備えるなど口座を使い分けると良いでしょう。

シングルの方の資産運用は、気軽に相談できる相手を見つけることが成功の秘訣です。資産運用をしていると、上がっていても下がっていてもこのまま継続していてよいか気になるものです。運用について相談したいと思ってもなかなか友人には話せないものですし、話せたとしても知識がない人からは「資産運用なんて危ない。やめた方がいい」と頭ごなしに言われてしまうかもしれません。
怪しい投資話や詐欺の被害に遭わないためにも、ぜひ運用について気軽に相談でき、信頼できるお金の専門家を見つけておくことをおすすめします。

社会保険や高齢者を支える公的制度や民間サービスについても年々変わっていく可能性があり、タイムリーに使える制度やトレンドについてもお金の専門家がアドバイスしてくれるとより心強いはずです。

3■夫婦共働き(DINKS)

子どもがいない分、お金の使いすぎに注意

子どもがいない夫婦共働きの場合、収入が多く、生活費に余裕ができるため、お金を使いすぎてしまいがちなので要注意です。

年収が他の家庭の2倍あったとしても、将来受け取れる年金は、2倍ほどの差はありません。現役時代の働き方によっても異なりますが、夫婦とも会社員の場合なら、一般的に夫婦で受け取れる年金は毎月30万円くらいのイメージです。年金生活になったときに、貯蓄がなければ生活費を一気に落とさざるを得なくなります。

収入が高い家庭であればあるほど、老後の年金収入とのギャップが大きくなりますので、早いうちから貯蓄をしっかりしておきましょう。子どもがいる家庭に比べて教育費がかからない分、資産運用をする際にリスクを取りやすくなります。預貯金だけにとどまらず、iDeCoを使って老後に向けての資産運用も進めていきたいところです。

介護や想定外のことにも備えておく

子どもがいないため、将来介護が必要になったときの手続き等をどうするのか、誰かに頼むとすればその分お金がかかりますので確認しておきましょう。
また、子どもを急に授かるケースもあります。子どもがいれば大きなお金がかかりますし、産休・育休や時短勤務などで収入がダウンする可能性もあります。
その時点で夫婦二人の収入がピークだったという場合も考えられるため、預貯金とリスク性資産を並行して、思いがけない支出にもしっかり備えておきましょう。iDeCoと合わせてNISAを使って資産運用していれば想定外の支出にも備えられます。

夫婦それぞれの資産形成を

共働き夫婦のお金についての理想としては、夫婦で常にオープンな状態にして、同じ目標に向かって資金計画を立て、資産運用をしていくことで、円満な関係が築けるでしょう。とはいえ、どちらか一人が、家族を代表して資産運用をするのではなく、各自の考えで各自の収入から資産運用をしておく方がいいでしょう。iDeCoやNISAの制度が二人分使えるため、税制面での優遇を目一杯使うことができますし、夫婦でもリスクに対しての考え方が違うので、選ぶ商品も自分にあったものが使えます。

三組に一組が離婚する時代です。いざ離婚となった場合、共有財産と個人の財産との違いが曖昧になりがちです。結婚前から持っている資産などをクリアにしておくなど、透明化をしておけると安心です。
相談の現場では「本当は離婚をしたいけれど、経済的に不安だから離婚ができない」というお話をお聞きすることがあります。万一のときに自分自身の考えで決断できるようにするためには、経済力をつけておくことは必要でしょう。

4■フリーランス ・個人事業主

収入に波があるからこそ資金計画をしっかりと

フリーランスや個人事業主は、会社員のように収入が一定ではありません。また、使える制度にも限りがある点に注意が必要です。ケガや病気などで仕事ができなくなった際、会社員なら有給休暇や傷病手当金がありますが、フリーランスや個人事業主にはいずれもありません。預貯金で多めに備えておくほか、医療保険、就業不能保険や所得補償保険など保険を検討するのも選択肢です。

特に不足しがちなのが、老後資金です。退職金のほか手厚い年金がある会社員に比べて、何もしなければ国民年金のみになります。そのため、iDeCoなども使ってしっかり準備していくとよいでしょう。フリーランスが利用できるiDeCoの掛け金は毎月68,000円と大型の積み立てが可能です。

iDeCoの掛け金は全額所得控除の対象となるため、所得税を節税しながら、老後の年金を増やせるのは大きな魅力です。ただし、iDeCoは原則60歳まで引き出せない点には要注意です。まさかのコロナ感染拡大で仕事に大きな影響がでた人が多かったように、不測の事態がいつ起きるとも限りません。手元の現金が不足しないよう預貯金やNISAなど途中で引き出せるお金も同時に積み上げていきたいところです。

※この記事の情報は2023年9月現在のものです。